障害者雇用の労働法実務(雇用率・差別禁止・合理的配慮)
障害者雇用の労働法実務(雇用率・差別禁止・合理的配慮)
概要
障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律・昭和35年法律第123号)は、①==法定雇用率==による雇用義務、②==障害者差別の禁止==、③==合理的配慮の提供義務==の3本柱で事業主を規律する。==2026年7月1日に民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げ==られる(対象事業主は従業員==37.5人以上==に拡大)。
本ナレッジは2026年6月時点の整理。
1. 法定雇用率(雇用義務)
1-1. 引上げスケジュール
| 時期 |
民間企業の法定雇用率 |
対象事業主の範囲 |
| 〜2024年3月 |
2.3% |
43.5人以上 |
| 2024年4月〜 |
2.5% |
40.0人以上 |
| ==2026年7月〜== |
==2.7%== |
==37.5人以上== |
- 国・地方公共団体は3.0%(2026年7月)、教育委員会は2.9%等、民間より高い率が適用される
- 実雇用率の算定: 週30時間以上=1カウント、週20〜30時間=0.5カウント(重度は2倍)。2024年4月から==週10〜20時間の重度身体・重度知的・精神障害者を0.5カウント==に算入できる特例が施行済み
- 除外率制度: 障害者の就業が困難とされる業種の雇用義務を軽減。==2025年4月に全業種一律10ポイント引下げ==済み(段階的廃止の方向)
1-2. 履行確保の仕組み
| 制度 |
内容 |
| 障害者雇用納付金 |
常用労働者==100人超==で未達成の事業主から==不足1人あたり月5万円==を徴収 |
| 障害者雇用調整金・報奨金 |
達成事業主への支給(2024年4月から支給方法を一部見直し) |
| 雇入れ計画作成命令・特別指導 |
著しい未達成企業への行政指導 |
| ==企業名公表== |
改善が見られない場合の最終手段(毎年公表例あり) |
雇用率制度は行政的義務であり、未達成自体が私法上の損害賠償責任を生むものではない。一方、下記の差別禁止・合理的配慮は==個別の労働契約関係の争点==になる。
2. 差別禁止(34条・35条)
- 募集・採用における障害者であることを理由とする排除の禁止(34条)
- 賃金・教育訓練・福利厚生等の労働条件における差別的取扱いの禁止(35条)
- 厚労省「障害者差別禁止指針」が具体類型を提示
- 私法上は、差別的取扱いが==不法行為(民法709条)・公序良俗違反(民法90条)==として損害賠償・無効主張の根拠となる
3. 合理的配慮の提供義務(36条の2〜36条の4)
| 場面 |
配慮の例 |
| 募集・採用時 |
面接の筆談・点字・試験時間の延長 |
| 採用後 |
机の高さ調整、通院への勤務時間配慮、業務指示の文書化、静穏な執務環境、支援者の同席 |
- ==過重な負担==にならない範囲で個別に提供義務(事業規模・費用・体制を総合考慮)
- 配慮の検討プロセスでは==本人との話し合い==が必須(一方的決定は不適切)
- 裁判例の傾向: 合理的配慮の不提供が==安全配慮義務違反・不法行為==と評価される事案が増加。休職からの復職場面では、==配慮すれば就労可能な業務の有無==を使用者が検討したかが争点となる(片山組事件・最一小判平10.4.9の枠組み〔職種限定のない労働者の復職可否〕と接続)
- 精神障害・発達障害の事案では、診断書の記載と実際の配慮内容の食い違い、プライバシー(障害情報の共有範囲)への配慮が頻出論点
4. 紛争解決手続
| 手続 |
内容 |
| 自主的解決の努力義務 |
事業主による苦情処理(74条の4) |
| 都道府県労働局長の助言・指導・勧告 |
障害者雇用促進法上の個別紛争解決援助(74条の6) |
| 調停(紛争調整委員会) |
差別禁止・合理的配慮に関する調停制度(74条の7) |
| 労働審判・民事訴訟 |
損害賠償・地位確認等(no.5) |
5. 実務チェックリスト
6. 関連ナレッジ
| ナレッジ |
関係 |
| 労働基準法に関する実体法(no.4) |
均等待遇・解雇制限 |
| ハラスメント・安全配慮義務(no.4.5) |
合理的配慮と安全配慮義務 |
| 労働法 改正・施行動向(no.11) |
2026年7月の雇用率引上げ |
| 手続法(no.5) |
紛争解決ルート |
本ナレッジは2026年6月時点の整理であり、個別の法的助言ではありません。雇用率・納付金の額は改定されるため必ず原典で確認すること。