労働事件 書面ひな形集
労働事件 書面ひな形集
概要
本ナレッジは、労働審判・民事訴訟で使用する主要書面のひな形を示す。事件名・事実・金額は【】内を置き換えること。証拠リスト・計算の詳細は「労働事件の書面・証拠チェックリスト」(no.4.4)、手続は no.5 を参照。
裁判所・審判委員会の様式・運用は地域で異なる場合がある。提出前に管轄の案内を確認すること。
1. 労働審判・申立書(未払残業代の例)
労働審判申立書
令和【 】年【 】月【 】日
【管轄地方裁判所名】 御中(申立ては地方裁判所宛て。労働審判委員会は事件ごとに裁判所内に組織される)
申立人 【住所】
【氏名】
相手方 【使用者の名称・住所】
申立ての趣旨
1 相手方は、申立人に対し、別紙計算書記載の未払時間外労働に対する割増賃金【金額】円及び
労働基準法第114条に基づく付加金【金額】円を支払え。
2 (必要なら)相手方は、申立人に対し、遅延損害金を支払え。
申立ての原因
1 申立人は【年月】に相手方に雇用され、【年月】に退職した(在職中の場合は在職中)。
2 申立人の所定労働時間は【 】、賃金は月額【 】円である(別紙労働条件通知書参照)。
3 申立人は争点期間中、時間外労働を行ったが、割増賃金が支払われていない(別紙出勤記録・
メールログ参照)。
4 相手方は労働時間を適正に把握する義務を負うが(労働時間適正把握ガイドライン・労安衛法第66条の8の3)、出勤記録が不備である。
5 請求は、支払期日【令和2年4月1日以降の分は3年、以前の分は経過措置2年】の
範囲内とする。
証拠方法
1 書面 別紙証拠説明書記載のとおり
2 証人 【氏名】(予定)
付属書類
・証拠説明書 1通
・計算書 1通
・労働条件通知書写し 1通
・給与明細写し 【 】通
申立人 【署名】
2. 労働審判・申立書(解雇無効の例)
労働審判申立書
申立ての趣旨
1 相手方が【年月日】にした解雇は無効であることを確認せよ。
2 相手方は、申立人を【元の部署・役職】に復職させよ。
3 相手方は、申立人に対し、解雇無効確認に伴い【年月日】から復職日までの
賃金【金額】円を支払え。
申立ての原因
1 相手方は【年月日】、申立人に対し、【解雇理由の概要】を理由に解雇した。
2 しかし、解雇理由は具体的・客観的な合理性・社会通念上の相当性を欠き解雇権の濫用に当たる
(詳細は別紙準備書面)。
3 よって、労働契約法第16条(解雇権濫用)により、解雇は無効である(有期契約中の解雇は同法第17条)。
(証拠・付属書類は未払例に準ず。解雇通知書・就業規則を添付)
3. 答弁書(相手方・使用者側・概要)
答弁書
令和【 】年【 】月【 】日
【管轄地方裁判所名】 御中
事件番号 令和【 】年(労)第【 】号
相手方 【会社名】
同代理人弁護士 【氏名】
第1 申立ての趣旨に対する答弁
申立てをいずれも棄却するとの労働審判を求める。
第2 申立ての理由に対する認否
1 申立ての原因1(雇用関係・在職期間)は認める。
2 同2のうち、所定労働時間・賃金月額は認め、その余は否認する。
3 同3は否認する。申立人の主張する時間外労働の事実はない(乙1・タイムカード)。
第3 相手方の主張(抗弁)
1 固定残業代の抗弁
賃金には固定残業代【 】時間分【 】円が含まれており(乙2・雇用契約書、乙3・賃金規程)、
時間外労働の対価である旨の明示・説明があり実労働時間とも乖離せず、対価性・判別可能性を
満たす(日本ケミカル事件・最一小判平30.7.19、康心会事件・最二小判平29.7.7)。
2 消滅時効の援用
令和【 】年【 】月【 】日以前に支払期日が到来した賃金請求権は時効により消滅して
おり、相手方はこれを援用する。
3 付加金
仮に未払が認められるとしても、相手方には【誠実な交渉経過・法解釈の相違等】の事情があり、
付加金の支払を命じることは相当でない。
証拠方法
乙1ないし乙【 】(別紙証拠説明書記載のとおり)
付属書類
答弁書副本【 】通、証拠説明書 1通、乙号証写し 各1通
(作成上の注意)認否は申立ての原因の項ごとに「認める/否認する(理由付き)/不知」を明示する。抗弁(固定残業代・時効・弁済等)は認否と区別して独立の項目に立てる。
4. 民事訴訟・訴状(損害賠償・ハラスメントの例)
訴状
令和【 】年【 】月【 】日
【裁判所名】御中
原告 【住所・氏名】
被告 【会社名・本店所在地】
請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、慰謝料【金額】円及び遅延損害金を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
請求の原因
1 原告は被告に雇用されていた。
2 被告の【上司職名】は、業務上の適正な範囲を超えて原告に対し【具体的言動】を
繰り返し、原告の精神状態を悪化させた(不法行為・安全配慮義務違反)。
3 原告は【病名】と診断され、治療費【 】円等の損害を受けた。
4 よって、被告は原告に損害を賠償する義務を負う(民法709条・715条、労働契約法第5条の安全配慮義務)。
証拠方法
(省略・別紙)
原告 【署名】
5. 準備書面(争点整理)
準備書面(第【 】回)
令和【 】年(【ワ/労】)第【 】号 【事件名】
原告(申立人) 【氏名】
被告(相手方) 【会社名】
令和【 】年【 】月【 】日
【裁判所名・係属部】 御中
原告訴訟代理人弁護士 【氏名】
第1 被告第【 】準備書面に対する認否
1 第1項は認める。
2 第2項は否認する。【否認の理由を具体的に記載】
3 第3項は不知。
4 第4項の法的主張は争う。
第2 原告の主張(反論)
1 争点1(未払残業の有無)について
【事実→証拠→評価の順で記載。例:甲4のメールログによれば、被告管理職は
所定終業後に業務指示を行っており…】
2 争点2(固定残業代の効力)について
【対価性(日本ケミカル事件基準)・判別可能性(康心会事件基準)への当てはめ】
第3 求釈明
被告に対し、以下の点につき釈明を求める。
1 【例:タイムカード(乙1)の打刻ルールと実際の運用】
(作成上の注意)認否は「認める/否認(理由付き)/不知(相手方の行為等)/争う(法的評価)」を項ごとに明示する。反論は争点単位で見出しを立て、必ず証拠番号を引用する。期日直前の大量提出は避け、提出期限を守る(no.8 参照)。
6. 証拠説明書
証拠説明書(甲号証)
令和【 】年(【 】)第【 】号
令和【 】年【 】月【 】日
【裁判所名・係属部】 御中
原告訴訟代理人弁護士 【氏名】
| 号証 | 標目 | 原本・写しの別 | 作成年月日 | 作成者 | 立証趣旨 |
| --- | --- | --- | --- | --- | --- |
| 甲1 | 雇用契約書 | 写し | R【 】.【 】.【 】 | 原告・被告 | 労働契約の成立、賃金体系、固定残業代の記載の不存在 |
| 甲2 | 給与明細(【期間】) | 写し | 各支給日 | 被告 | 賃金の支払状況、基礎賃金の構成 |
| 甲3 | 出勤簿・タイムカード | 写し | 【期間】 | 被告 | 始業・終業時刻、時間外労働の存在 |
| 甲4 | 業務メール・チャットログ | 写し | 【期間】 | 原告ほか | 時間外の業務指示、深夜の稼働実態 |
| 甲5 | 就業規則・賃金規程 | 写し | R【 】施行 | 被告 | 所定労働時間、賃金計算方法 |
| 甲6 | 診断書 | 原本 | R【 】.【 】.【 】 | 【医師名】 | 症状・通院状況(ハラスメント・労災型事件) |
(作成上の注意)立証趣旨は「その証拠で何を立証するか」を具体的に1〜2文で書く(「労働時間」だけでは不十分)。私文書で成立に争いが生じうるもの(手書きメモ等)は、作成経緯を陳述書(後記9)で補強する。
7. 計算書(未払残業代)
計算書(未払割増賃金)
基礎時給:月給【 】円 ÷ 月平均所定労働時間【 】h = 【 】円
(基礎賃金から除外する手当・月平均所定労働時間の算定は no.4.8 §2 参照)
| 年月 | 時間外(h) | 深夜(h) | 休日(h) | 60h超(h) | 基礎時給 | 請求額 | 既払額 | 未払額 |
| --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- |
| R5.1 | 20.0 | 5.0 | 8.0 | 0.0 | 2,500 | 【 】 | 0 | 【 】 |
| … | … | … | … | … | … | … | … | … |
| 合計 | | | | | | 【 】 | 【 】 | 【 】 |
遅延損害金・付加金の付記
- 在職中の未払分:年3%(民法404条・法定利率)
- 退職後:==年14.6%==(賃金の支払の確保等に関する法律6条。退職日の翌日以降、退職手当を除く賃金に適用)
- 付加金:未払割増賃金等と同一額を上限に請求(労基法114条。==除斥期間3年==・申立書への明記は no.4.2 §4 参照)
- 割増率の重複(時間外+深夜等)の計算は no.4.8 §3 参照
8. 内容証明(時効更新・催告)
内容証明郵便
【相手方会社名】 御中
【年月日】
【自分の氏名】は、貴社に対し、【未払賃金・残業代】について、
別紙計算書のとおり【金額】円の支払を求めます。
支払期日までにご対応いただけない場合、労働審判又は訴訟等の
手続を検討します。
以上
【署名・住所】
(時効管理上の注意)催告(内容証明)には==6か月間の時効完成猶予==の効力がある(民法150条1項)。猶予期間内に労働審判申立て・訴訟提起等をしなければ時効は完成する。==再度の催告による猶予の延長は認められない==(同条2項)。内容証明の発送日・到達日は付加金の除斥期間管理(no.4.2 §5-3)とあわせて記録すること。
9. 陳述書(骨子)
陳述書
令和【 】年【 】月【 】日
【住所】
【氏名】(署名・押印)
1 経歴・担当業務(入社年月、所属、職務内容)
2 労働時間の実態(典型的な1日の流れ。始業前準備・休憩中の対応・持ち帰り業務の有無)
3 残業指示の状況(誰から・どのような方法で。メール・チャット〔甲4〕との対応関係)
4 【争点に対応する具体的事実(日時・場所・発言者・発言内容を特定して記載)】
5 本件に至る経緯と現在の状況
(作成上の注意)時系列に沿って具体的に記載し、直接体験した事実と伝聞を区別する。書証と矛盾しないか提出前に照合する。作成方法・尋問との関係は「尋問・陳述書・期日対応の実務」(no.8)を参照。
10. 関連ナレッジ
| No. | タイトル |
|---|---|
| 4.2 | 未払賃金・残業代・付加金の実体と立証 |
| 4.4 | 書面・証拠チェックリスト |
| 4.8 | 残業代の具体的計算実務 |
| 5 | 手続法 |
| 4.7 | 損害額・解決金の算定実務 |
| 8 | 尋問・陳述書・期日対応の実務 |
ひな形は事件に合わせて改変すること。個人情報・秘匿事項の記載に注意すること。